単純な心

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「…私ならもう大丈夫だから…」 いや…。 俺が…大丈夫なのか…。 こうやって、会いたいときに、すぐ会うこともできなくなる。 小さなこの体を抱きしめることもできない。 もし、どうしようもなく 会いたくなってしまったら その気持ちを抑えることができるだろうか…。 こんなにも大事な女。 麻衣に会うたびに、 弱い俺の部分が心を揺らしてくる。 目の奥にジワッと溜まったものを感じて、 それを紛らわそうと、 麻衣の体を強く抱きしめた。 「裕?泣いてるの?」 「泣くか!バカ!!」 「うそぉ~泣いてた!」 「あぁ~もういい」 顔を引き寄せ奪った唇と、俺の胸に心地よくおさまった麻衣があまりにも愛おしすぎて、離れることをしらない。 「裕…がんばってきてね」 背中に回ってる小さな麻衣の手は、俺の服をギュッと掴んだ。 わかってる。 麻衣の本音は。 部屋で、一緒に行きたいと言ってくれたのが本当の気持ちだってこと。 強がらせてごめん。 無理させてごめん。 でも、 お前の言葉で俺も決心がついた。 「1年勉強して、帰ってくる」 「うん」 大きくうなずいて俺を見上げたその目に、もう見えなかった涙。 麻衣… お前がそう決めたなら、俺も耐えるよ。 麻衣の言うとおりだと思う。 俺たちは、あの頃とは違う。 でも、 アメリカ行きを、 簡単に決めたと思わないでくれ。 離れることを、 ためらわなかったと思わないで。 9年たった今だから言えるんだ。 俺は、 麻衣がいるから頑張れる。 麻衣がいるから幸せだと思える。 どうか信じて欲しい。 麻衣が 俺のすべてだということを。
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