993人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「…私ならもう大丈夫だから…」
いや…。
俺が…大丈夫なのか…。
こうやって、会いたいときに、すぐ会うこともできなくなる。
小さなこの体を抱きしめることもできない。
もし、どうしようもなく
会いたくなってしまったら
その気持ちを抑えることができるだろうか…。
こんなにも大事な女。
麻衣に会うたびに、
弱い俺の部分が心を揺らしてくる。
目の奥にジワッと溜まったものを感じて、
それを紛らわそうと、
麻衣の体を強く抱きしめた。
「裕?泣いてるの?」
「泣くか!バカ!!」
「うそぉ~泣いてた!」
「あぁ~もういい」
顔を引き寄せ奪った唇と、俺の胸に心地よくおさまった麻衣があまりにも愛おしすぎて、離れることをしらない。
「裕…がんばってきてね」
背中に回ってる小さな麻衣の手は、俺の服をギュッと掴んだ。
わかってる。
麻衣の本音は。
部屋で、一緒に行きたいと言ってくれたのが本当の気持ちだってこと。
強がらせてごめん。
無理させてごめん。
でも、
お前の言葉で俺も決心がついた。
「1年勉強して、帰ってくる」
「うん」
大きくうなずいて俺を見上げたその目に、もう見えなかった涙。
麻衣…
お前がそう決めたなら、俺も耐えるよ。
麻衣の言うとおりだと思う。
俺たちは、あの頃とは違う。
でも、
アメリカ行きを、
簡単に決めたと思わないでくれ。
離れることを、
ためらわなかったと思わないで。
9年たった今だから言えるんだ。
俺は、
麻衣がいるから頑張れる。
麻衣がいるから幸せだと思える。
どうか信じて欲しい。
麻衣が
俺のすべてだということを。
最初のコメントを投稿しよう!