アホの勘あなどるべからず

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「……ゔぉー…」 急に唸りながら、モソモソと手を伸ばして何かを探してる。 寒かったのか布団の端を掴んで、自らクルクルと巻かれにいく。 初めて目の当たりにする、芋虫人間の形成過程。 「……がぁぁ……」 観察されてることも知らず、布団の巻き具合が強かったのか、次は左右に体を動かして苦しそうにまた唸り出した。 布団を解いて普通にかけてあげると、すぐに眉間のシワは消えて、マヌケな寝顔で戻っていく。 感情と言動が直結してるのは知ってたけど、酔っててもそれは変わらないらしい。 「…アホなヤツ」 森田さんが起きたのは、風呂から上がってすぐのこと。 このまま朝まで寝るだろうと思ってたのに、急に地響きのような声を発しながら、それはそれは不細工なザマで顔面が歪んでいた。 …さすがに吐かれるのは困る。 何度目かの呼びかけでパッと目を開いた森田さんは、渡されたペットボトルの水を勢いよく空にした。
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