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一向に喋らず動かずにいるから、吐かれるんじゃないかって心配になり、手を解こうとしたら。
「すきです」
「………」
いきなり愛の告白ときた。
さすが酔っ払い。
なんでも口にしちゃう。
「せんぱい すきです」
「酔った勢いで言っていいのそれ」
「………」
大人しく閉口した森田の抱きついた手をほどいて、何も言わずに車まで連れていった。
黙り込んでたくせに聞いたこともないような鼻唄を歌いだすから、変に心配した自分がアホらしく思えた。
運転してから数分経った頃、フロントガラスにぽつぽつと小さな水滴が降りはじめる。
確かに湿った匂いがしたな、なんて思い返してたら次第に雨粒は大きくなっていって、フロントワイパーのレバーを押し下げた。
フロントガラスを見つめていた森田さんは、何を思ったのか。
「あのときもこんなふうに電話したらよかったかなぁ」
と、ポツリつぶやいた。
酔いが少し醒めたのか、先程よりも口調がはっきりしている。
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