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「もしかしたらせんぱい こうやって来てくれたかもしんないのに」
ああ、俺に約束をすっぽかされた時の話か、とそこで合点する。
こうして来てたかはさておき、普通は連絡入れるだろって俺もこないだ本人に言ったばかり。
その時、珍しく森田さんが言葉を濁してたのを思い出した。
「でもこわかったんですよね、せんぱいに忘れたっていわれるの」
「え?」
聞こえたけど、思わず聞き返してしまう。
ちょうど黄信号になり、ブレーキを踏みながら森田さんを見た。
「なんでもないっすよぉ ハハハ」
垂れた眉にゆるんだ口元がだらーんと笑ってる。呑気そうでアホっぽい、まぬけな顔。
なぜだか直視したくない俺は前方に視線を戻した。
「それよりせんぱい 今日わたしのみすぎましたかねぇ」
話を変えた森田さんはまた腑抜けたように笑った。
ガラスを打ちつける雨粒が一定音で響き、気付けば寝息をたてて眠っていた。
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