花火のように

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君は毎日、私のお見舞いにきてくれた。 お互いの家族の話、好きなもの、嫌いなものいろんなことを話し合った。 夜は私がさびしくならないようにとオススメと漫画を貸してくれた。 君と会うたびに私は君のことが好きになっていた。 でも、想いを伝えることはしなかった。しない方がいいと思ったから。 『どうせ私はこの世からもうすぐいなくなってしまうのだから』 君と出会ってからは、人生で最高の日々だった。 夏になり二人で雑誌を見ていると君がいきなり言いだした。 「二人で花火を見にいかないか?」 花火なんて小さい頃に親といったきりだった。 異性の人と行くなんて夢のまた夢だと思っていた。 先生や両親になんとかお願いし、きちんとした対策を考えて花火大会、当日を迎えた。 人ごみで気分が悪くなったが早くからうちの両親が座れる場所をとっていてくれたので少し休むと落ち着きだした。 両親は私たちに気を遣ってか、せっかくとってくれていた場所を私たち二人だけで座れるように「近くの場所にいるから」とゆずってくれた。 お母さんが「あなたたちが見えないところに行くからせっくだから楽しみなさい。具合が悪くなったらすぐに連絡するのよ」と言ってくれた。 去り際にお父さんが「政太くんよろしく頼むよ」と言っていた。 君は「はい」と力強く返事をしてくれてなんだか照れくさかったけど、嬉しかった。 この年になって初めて異性と見る花火はとても綺麗だった。 相手が優しい君で本当に良かったと思った。 いつまでもこの時間が終わってほしくないなと思った。 君がぎゅって手を握ってきてくれたら私もぎゅっと握り返したんだ。 二人の間に絆が生まれた気がした。 『マダ、シニタクナイ』そう強く思った。
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