花火のように

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外は雪が降っていた。 君とはしばらく会っていない。 手紙のやりとりも少なくなっていった。 どうして会いにきてくれないの? 他に好きな人ができたの? もう、私のことは嫌いになったの? 早くしないと私、死んじゃうよ。 私はついに手紙も書けなくなった。 テレビからは新春のテレビ番組の音だけが聞こえてくる。 言葉を発するのもやっとだった。 世間はお正月だというのに両親や親戚が交代で私の面倒を見にきてくれている。 君と過ごしたかったクリスマスは過ぎて、新しい年が始まっている。 もう、あの楽しかった花火大会にはいけないのだろう。 私は死を受け入れていた。 最後に好きな人と一瞬でもキスできただけで私の人生は輝かしいものになったと思った。 『ハヤク、ラクニナリタイ』 そんなことを思っていたらお母さんが「奈々子!死んじゃダメよ!」大声を上げて病室に入ってきた。 「新薬が間に合ったのよ!あなたの病気の進行を止める薬の許可が降りたのよ!」 その日のうちに私に体に新薬は打たれ、日に日に私の体は元に戻っていった。 歩けるようになったら君に会いにいく!そう思ったらリハビリも頑張れた。 君の手紙がこなくなってから数ヶ月、私は元の元気を取り戻し、外出もできるようになっていた。 ワイドショーでは、花火大会の話題も出る季節になっていた。 私は、勇気を出し、君の住所の書かれたところへ行く決心をした。 どんな結末になってもいい。 白黒はっきりさせたかった。 君が私を好きでなくなっていても私は強く生きていくと決心をしていた。
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