第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
山道を歩いていくと、そこに小さな池と大きな池がありました。小さな池は大きな池に「僕の池は君の池の10倍はあるかな。大きな魚もいっぱいいるんだよ」と、自慢ばかりされていましたので、いつも嫌な気持ちでした。 小さな池は考えました。僕が大きな池に勝てるものはなんだろう。そこにある日、釣り人がやってきました。釣り人はまず小さな池で釣りを始めました。小さな池には小さな魚しか住んでいませんでしたので、釣り人は小さな魚を釣って、そこそこ満足しました。 釣り人はそれから大きな池に行って釣りを始めました。釣り人は魚のヒキの強さに驚き、釣り針や釣竿も大きくしました。そして大きな魚を何匹も釣りあげました。釣り人は大変満足して帰っていきました。 やがてその国のエネルギー政策の一環として、大きな池に流れ込む川に大型のダムが作られました。大きな池はダム湖として整備され、それまでとはまったく違う外観をもつようになりました。いっぽう小さな池はそのままでなにも変わっていません。 小さな池には秋トンボが舞っていました。浅瀬にはフナが群れをなして気持ちよさそうに泳いでいました。また釣り人がやってきました。彼は何匹かのフナを釣りあげると、帰る時にはそれを再び池に戻して、とても満足して帰っていきました。 冬がきても、春がきても、夏がきても、また秋になっても、ずっと小さな池はずっと小さな池のままでした。春の頃、水温む池には、小さな命が満ち溢れました。小さな池の周りには美しい野花たちが風に揺れていました。この頃では野鳥や小さな動物たちも多くやってきます。すべての命が小さな池に感謝していました。ありがとう。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加