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この世に超能力者は存在しない。親にも先生にも面と向かって言われたわけじゃないのに、俺たちはそれを真に受けている。彼らが活躍するのはフィクションの中だけ。そう思っている。
実際には自分が超能力者だったりするのだけれど。
「お前ら、ここは禁煙だ。吸うなら外の喫煙所へ行け」
「はあ?うるせえよ、チビ」
最後の単語に桐谷の肩がピクッと動いた。それでも手を出さなかったのは少しは学習していると言うことだろう。
「・・・他のやつに迷惑だ。外へ行け」
「チビがなんか言ってるんだけど」
泥水の中のカエルのような鳴き声で四人の男共は笑う。
桐谷が片目を細めた。我慢の限界らしい。
やれやれ、しょうがない大人だ。
俺は桐谷の肩をトンと叩き、四人に向かって歯を見せて笑った。
こいつ、桐谷班の班長なんだけど。
「・・・お前・・・桐谷か?」
咥えタバコで男が訊ねる。
「あぁ、そうだ」
「しっ、失礼しましたっ!」
さすが、持つべきものは長の肩書き。鬼の班長、桐谷の名前は班員はおろかヒマワリ組全てに行き渡っている。
しかし、桐谷はそれが不満足のようで俺を横目で見上げた。
「肩書きだけで人間は決まらんぞ」
「あれ?聞こえてた?」
「聞かされた、と行った方が正しいな」
「あっ」
俺は反射的に桐谷から手を離した。
「ごめん・・・」
「かまわない。奴らに俺のことを知らせたんだろ?」
「まあ・・・」
俺が言わなくてもあいつらは気づくと思う。黒髪に低身長、班長のバッチを見れば誰だって桐谷その人だと気づくはずだ。
「ありがとな。凛」
「えっ」
「危うく手を出すところだった」
「ははっ」
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