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また、だ。
心臓がキュッとしてジクジクと痛む。
日に日に増していく痛みは、いつも彼らを見ているときだった。
でもどうしてなのか、答えは今だわからないまま。
ただ、黒いなにかに飲み込まれそうな自分を、必死に抑えるしかなかった。
「ゆう、帰ろーぜ」
視線を机の上に代えたとき、頭上から声がした。
見れば、先ほどまで二人っきりで仲良く話していた彼がいる。
「あ、それとも、もう少しいる?」
広げられた教科書やノートを目にした彼は、微笑む。
「ううん、帰る」
私は椅子から立ち上がって適当に片付けた後、少し離れて立っていた彼女に問い掛けた。
「葵ちゃんも、一緒に帰ろ?」
「あたしはまだ、学校に用事あるから」
「よーし、じゃあ帰るかー。葵、また明日な」
ひらひらと手を振る彼に合わせて、私も振った。
葵も、またあした、って笑って言って。
だけどどこか寂しさを含んでいるように私には聞こえた。
知っているから。
だから、わかる。
葵ちゃんは、達也のことが、すきなんだ。
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