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花盛りの海棠(かいどう)の木々が取り巻く湖の畔(ほとり)、小魚を獲る娘が二人いる。
一人は緑衣で、いま一人は青衣を纏(まと)っていた。
遠目には手足のすんなり伸びた華奢な体つきは二つながらに見分けがつかず、近づいて見てもいずれも肌白く尋常ならぬ目鼻立ちは姉妹かと思わせる。
だが仔細に見れば、緑衣の娘の顔は白いながらも頬はうっすらと赤みが差し、小さいがやや厚めの唇は白絹に朱を点じた様に鮮やかであった。
細身ながらも、緑の木綿(もめん)が濡れて張り付いた胸や臀部は豊かに肉付いている。
黒目の勝った大きな目は、湖面の光を反射しつつ、微かに笑っているかに見える。
これに対し青衣の娘の顔は、肌が衣の色を映した様に全体に青白く、
水気を含んだ青の木綿が覆う体つきは若木の様に一直線で、年頃の娘というより少年のそれに近かった。
湖面を一心に覗き込む端のやや釣り上がった目といい、小さく引き締まった薄桃色の口元といい、端正ながらもどこかきかん気で幼いものを感じさせた。
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