狩り立つる少年

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「所詮、畜生だからな」 そう応える少年は笑わない。 「ほう、見事な羽ですな」 いつの間にか子敬がやってきて扇子を口元に当てている。扇子の上の目が、朱に染まった鷹の羽を眺めながら、値踏みする様に細まる。 「一度で仕留めなければなりませんでしたわい」 疲れを滲ませた顔で呟くと、子胥は袖で顔に浴びた血を拭った。 「三日前、陛下にお供した際は、鵠(くぐい)を一矢でお仕留めになりました」 だが、老人がその言葉を未だ語り終えぬ内に、夫差は無言で日の傾いた緑野を歩き出していた。
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