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校舎の窓から見える空は青く、山は現在紅葉で赤茶色。
田んぼは収穫期を迎えて、現在半分程度刈り取りが済んだところだ。
風は山の空気を教室内へ運んでくる。
自然はいつも黙ってその役割を担っている。
それに対して自分は悩んでばかりだ。
前川悠斗(まえかわ ゆうと)はぼんやりと外を見ていた樹に訊いた。
「樹、お前はどこの高校へ行く予定だ?」
秋口も深まると三年生達はいよいよ迫る中学卒業後の進路について、ひいては己の将来について不安を抱き始める。
その不安を取り除こうと、つい話題に出す。
樹は澄ました顔で答えた。
「百丹(びゃくたん)高校」
「あそこは遠くないか?」
「遠いね」
百丹高校だとここらあたりから電車を乗りついで2時間はかかる。
さらに偏差値は高く、この中学で志望する生徒はおそらく樹一人だけだ。
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