なぜ生きる

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翌日悠斗が「昨日は何かあったかー?」とニヤけ顔で訊いてきたので、無視した。 「お、これは、何かあったな」 「何かあっても言わない」 「フフフフ。俺の目はごまかせないぞ。ズバリ! 告白は失敗したでしょう!」 言い当てられて樹はビックリした。 実は見ていたとか!? 「何でそれを!?」 「フハハハ。語るに落ちるとはこの事だ!」 悠斗は遠山の金さんのように右肩を前に出した。 服は脱がないけど。 「ヌヌヌ・・・」 悠斗に上手に誘導されたのだと気付いた。 樹は悔しくなった。 「クソー! 絶対内緒にしようと思ったのに!」 どうしていつもまんまと漏らしてしまうのか。 悠斗は偉そうに説教を垂れた。 「樹はもう少し嘘が上手くなるといいぞ」 余計な御世話だ。 「ちなみに、今のはあてずっぽうではない。朝から如月花音が落ち込んでいるから分かっただけだ」 悠斗はすぐれた観察力と洞察力を持つ。 しかしその能力が女以外に発揮されることはない。 樹は言い訳した。 「しかし正確には告白かどうかわからない。何も言われないで終わったから」 「でも他の目的は考えられないだろ?」 「そうだけど・・・」 チラリと花音を確認すると、気の毒なほど頭を下げている。 まるで私を見るなと言わんばかりに。
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