消えた、自分。

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雨が降っている。 しとしとと降り続ける雨を気にせずに、傘もささず、誰にも見つからないように一人で道を歩いて行く。 前から初々しさの残った甘いカップルが、こちらを見向きもせずに歩き去っていく。 右手にはさっきコンビニで買ったコーヒーと、明日の朝飯のパンだけ持っている。 今日の僕の一日は、とても退屈だった。 今日だけとは言わず、毎日。 なんとなしに会社に行って、仕事が終われば誰とも話さずに帰路につく。 そんな日常が、一瞬にして変わるだなんて、この時は全く思っていなかった。 雨のなかぽつりと呟く。 『何か、起こればいいのに。』 ――――――――と。………………………… 雨が降り続けるなか、一人の影法師はいなくなっていた。
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