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「んぐっ!」
慌てていた俺は、つい。思いっきり金髪女の口元を押さえ込んでいた。
「もごっ、ぷは!苦しいって!」
「て、てめぇが。いきなり変なことを叫ぼうとするからだろうが!?」
「これはお巡りさんに助けを求めても良いレベルかな?」
「は、はぁ!?なにいって──!」
「黙っててあげたいけど……あんな強引に襲ってきた事実は消えないし…ね?」
目の前の女は、ニヤリと勝ち誇ったかのように口元を緩めていた。
「ぐぅ・・・!」
「さて、私が何を求めているのかは承知してるよね?」
しまった・・・。
こいつの狙いは端からこれだったのか!!
まんまとやられた!
「わ、わかった・・・協力してやろう。不本意だが・・・っ」
「よろしい!ならば手伝ってくれたまえ」
「なんか。釈然としねぇ・・・」
なんて、上から目線な女だ。
「あっ、言い忘れてたけど探してるのは二人ね。一人は黒いドレスを着た金髪のかわいい幼じ……女の子で、もう一人は銀髪のむっつりなんだよ」
「おい。抽象的過ぎだろうが。もっと、こう特徴とかねぇのかよ?」
こいつ、本当にその知り合いたちを探す気があるのだろうか?
そう感じてしまうくらいに適当な答えだったのだ。しかも、一人はむっつりらしい。
「まぁ良いじゃない、さぁ共に行こうじゃないか!」
「……なんだか。先が思いやられるっ」ガックリ
肩を落とす俺とは裏腹に、意気揚々と片手を挙げて前へと進んでいく金髪女。
ぁ、そういえば…名前きいてねぇぞ。まぁ、別にいいか。そんなに長い付き合いになるわけもないだろうし。
──と。このときの俺は、簡単に考えていたのだ。
こいつとの出会いによって。俺の日常が変化することに、まだ気づいていなかった。
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