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「今持ってる番組なんて、ホームセンターの番組だけですから」
「そうそう。でも、それすら違和感あるよね?千島が日曜大工とか、園芸とかするイメージないじゃん?」
「本人も楽しそうじゃないしね」
女の子たちの文句は止まらない。
「彼女が花形だったのなんて、もう百年くらい前の話です。彼女の同期なんて、とっくにお医者さんとか政治家さんとかお金持ちの人見つけて結婚退社してますよ。あの人はその波に乗り遅れたんです。キー局とはいえアナウンサーという肩書きがあるんだから、早いうちに結婚しなくっちゃ損ですよ。東京へ進出して成功するキー局のアナなんて、ほんの一握りなんですから」
ありさの愛らしさに鼻の下を伸ばしながら、なるほどというふうに先輩たちは頷いているが、俺は、ありさの本音を聞いた気がした。
つまり、早く将来有望な男を見つけて引退したい。そういうことだろう。
「フリーへの転身もできず、婚期も逃すなんて、女子アナの中では負け犬ですって」
「そのうえ、不倫って、ねぇ?」
女の子たちは意地の悪い顔で囁きあった。どうやら、千島さんは若い女子社員に嫌われる典型的なお局タイプらしい。
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