48人が本棚に入れています
本棚に追加
「だめだめ、こいつは。この通り、超ちゃらいんだから。見てよ、この髪の毛。いかにも遊んでそうだろ?」
室岡先輩が、俺の髪の毛をわしゃわしゃとかき混ぜる。
やめろよ、せっかく切ってもらったばかりなのに。
でも俺は、そんなことおくびにも出さず、
「そうっすね。自分、ちゃらいんで」
さりげなく先輩の手を払うと、ぐちゃぐちゃにされた髪の毛を整え、へらへらと笑った。
社会人になって二年と少し。まだまだひよっこの俺は弱き立場にある。今日だって、先輩たちが狙った獲物をおとすための餌として連れて来られたわけだから、でしゃばるわけにはいかないのだ。
「こんな若造より、俺みたいな大人の男の方がありさちゃんにはあってると思うよ」
「だってぇ、室岡さん、もう三十でしょう?おじさんじゃないですかぁ」
「ひどいな、ありさちゃん。来月の誕生日が来るまではギリ二十代だよ」
「同じようなものですよぉ」
ははは…。
室岡先輩とありさのやりとりに、一瞬笑いが沸き起こった。が、端っこに座っていた女の人が、こほんと咳払いをすると、笑いは尻つぼみになっていった。
最初のコメントを投稿しよう!