episode2・①

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「ここだけの話しですよぉ」 内輪の会議が終わると、ありさがこう前置きした。 女のここだけの話しが、ここだけに止まらないのは暗黙の了解だ。 それでも、先輩たちが身を乗り出したので、俺も、興味深々の顔をしてみせる。 ああ、早く、かえりてぇ。 「実は、千島ってぇ、彼氏がいるみたいなんです」 もったいぶったわりには少しも大したことのない話だった。それよりも、千島さんから、呼び捨てに変わったことのほうが俺には衝撃的だ。 「彼氏っていうか、ねぇ?」 こばかにしたように鼻で笑ったのは、一万円を託された彼女だ。この子は自称フリーアナウンサー。夕方の番組の食べ歩きコーナーのレポーターをしていると言ったっけ。 「どうする?言っちゃう?」 「言っちゃう?言っちゃう?」 そこから、また、女の子たちは顔を見合わせ笑い合った。 なんだよ、もったいぶるんじゃねぇよ。 俺は、もうどうでもよくなってビールを煽った。
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