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「ここだけの話しですよぉ」
内輪の会議が終わると、ありさがこう前置きした。
女のここだけの話しが、ここだけに止まらないのは暗黙の了解だ。
それでも、先輩たちが身を乗り出したので、俺も、興味深々の顔をしてみせる。
ああ、早く、かえりてぇ。
「実は、千島ってぇ、彼氏がいるみたいなんです」
もったいぶったわりには少しも大したことのない話だった。それよりも、千島さんから、呼び捨てに変わったことのほうが俺には衝撃的だ。
「彼氏っていうか、ねぇ?」
こばかにしたように鼻で笑ったのは、一万円を託された彼女だ。この子は自称フリーアナウンサー。夕方の番組の食べ歩きコーナーのレポーターをしていると言ったっけ。
「どうする?言っちゃう?」
「言っちゃう?言っちゃう?」
そこから、また、女の子たちは顔を見合わせ笑い合った。
なんだよ、もったいぶるんじゃねぇよ。
俺は、もうどうでもよくなってビールを煽った。
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