episode3・①

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「ごめん、言いすぎたよ」 いつの間にか夫が背後から私を抱きしめていた。 武道の心得のある夫は頼りがいもある。私を抱きしめる腕は、太く、力強い。 この逞しい腕に私も、息子も守られている。 そう思った途端、さっきまで夫を責めていた気持ちが罪悪感へ変わった。 わかっている。彼に、感謝しなければいけないことは。 けれども、一方でこうも考える。 でも、この腕で、本当にあなたが守りたかったのは、私だったの? 私は、こう問いかけそうになるのを、いつもすんでのところで我慢しているのだ。 今らさらこんなことを言って何になる?何にもならない。それどころか、全てが崩れてしまうかもしれない。 固く強いはずの家族の絆は、でも、本当はものすごく脆い。けれど、そのことを知っているのは私だけだ。 私は上り詰めた言葉を飲み下すと、夫の腕に顔を埋めた。
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