わりとテンプレでもないプロローグ

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 芙亜の顔にも不可解な表情が浮かんでいる。 「透流の詠唱は……、問題ないわ。一字一句たりとて」  芙亜は短く答えた。透流のバックアップを司る芙亜も封印のための詠唱は暗記していた。  ここで聞いていた限りでは、透流の詠唱に誤りは見当たらなかった。 「じゃあなんで? くそっ! もう一回、もう一回だ!  壱からやり直してみるか」 「待って!」  芙亜は再び詠唱を繰り返えそうとする透流を制した。  詠唱をやり直すのはリスクを伴う。  最悪の場合は、これまで集めてきた六つの鍵が効力を失くし、収集しなおす必要すら生じかねない。  彼女は自分の役割を理解していた。  透流は単なる鍵の管理人であって、冥府の理(ことわり)を感知できない。  それができるのはこの場には自分しかいない。  芙亜はゆっくりと六つの台座を確認していく。  大丈夫だ。問題ない。  鍵は作用している。うっすらと輝きを放っていることからもそれがうかがえる。  それならば、何故新たな封印が発動しないのか。  芙亜は周囲の力場に心を委ねた。  六つの点からそれぞれ中央に向う六色の道筋が浮かぶ。 (おかしい……、詠唱を終えたはずなのに……、  違う! 寸断されている。  鍵からの力が中央に届いていない?)  芙亜が精神を集中すると、六つのエネルギーが合流する地点にうっすらと鍵穴のようなものが浮かんでいた。 「七つ目の鍵……」  芙亜が小さく漏らした。 「七つ目の鍵?」  透流が芙亜の言葉を繰り返す。 「そう、鍵は六つじゃ足りないんだわ!」 「馬鹿な、台座は六つ、それに……、この世界のどこを探したってこれ以上の鍵は……」  言いかけて、透流ははっと気が付く。  それは芙亜の言わんとしていることと同じだった。 「そう、冥界には鍵なんてそもそも存在しない。  わたしたちの世界には六つしか鍵は無かった。  だとしたら……。  魔界…………」 「魔界?」
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