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その時は、異世界から冥界へ。芙亜の力があれば簡単なはずじゃ。
この世界から冥界へ赴くよりもな。
直接再封印を施せばよいのじゃ。帰る方法を探すのはそれからでも遅くはない。
そんなところじゃの。
仮に……。この世界の人間の召喚方法が手に入ったならその時は遠慮なく儂を呼んでくれ。
おいぼれじゃが、何かの役には立つじゃろうて」
天野の申し出に透流は静かに首を振る。
天野の力を過小評価しているわけではない。
だが、この一件はそもそも自分と芙亜に与えられた任務なのだ。
透流はそう認識していた。
「明後日か……。
異世界の飯がどんなものかわからねえし。
こりゃ、明日中に美味いもんを沢山食っとかねえとな」
それで決まった。天野の話では逆召喚魔法陣の展開の準備にはそれほど時間もかからないという。透流と芙亜の手助けも要らないということだった。
透流にしても、芙亜にしても必要なのは心構えだけ。
今からできることは何もない。体ひとつ(あるいは魂ひとつ)で転生するだけのことだ。
透流は、異世界転生までの期間を休息にあてた。
そして、決行の日がやってくる。
「ああ、じゃあ行ってくる。無難に転生してくるさ」
言い残すと透流は魔法陣に飛び込んだ。
自ら望んでの異世界転生。世界の秩序を保つため。
冥界王の封印を延長する、その手段――七つ目の鍵――を手に入れるため。
透流の異世界生活が幕を開けた。
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