わりとテンプレでもないプロローグ

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 科学に支配されたこの世界での異質な力。魔力とも呼ばれるその力の源は、魔界にある。  天野は、二人の表情だけを見て続けた。 「それぞれの世界で自分たちの世界をどう呼び習わしているかは知らんがの。  この世界があり、冥界があり、そして魔界がある。  これらはまったく異質な世界じゃ。じゃが繋がっておる。完全に独立した世界というわけではない。芙亜が冥界へ干渉することが可能なようにな。  そしてお主たち、儂も含めてじゃが……。  鍵を鍵として形作る能力、自然現象を操る能力。冥界への行き来。  それら全て魔界由来の力。魔界を源とする力をほんの少し融通して貰っているにすぎん。  地・水・火・風、そして光と闇……。  六つの力は、この世界の構成とも通ずるものがある。  じゃが、七つ目の力。  芙亜の話では六つの力を束ねた力。  それはおそらく儂らの世界では手に入らんのじゃろう」 「ええ、感じることはできましたが……、あれは未知の力です。  出会ったこともないような。表現することすら難しい……」  芙亜が慎重に言葉を選びながら語る。 「そのとおりなんじゃろう。  儂らの世界には無いもんじゃ。  それを手に入れるためには、魔界に赴かねばならん。  そしてそのための方法は……」  そこで、天野は言葉を切った。  それを告げるのが二人にとって酷だとわかっていた。  他に方法があれば教えてやりたい。  だが、選ぶべき手段はひとつしかなかった。 「魔界……。  いや異世界と言ったほうが通りがよいじゃろうな。  魔力が常態で存在し、魔王が統べる世界ということから魔界と呼びならわされているが、伝手を頼って聞いた話では今は魔王の座は空位らしいからの。魔力はあっても魔王はおらん。そういう意味では異世界と呼ぶ方が適切なんじゃろう。  異世界へ行って、七つ目の鍵を探し当てるしかなかろう。  ただ、困難なのは、この世界と異世界を簡単に行き来する術が無いということじゃ。  異世界に行くためには、一旦この世界の体から離れ、新たな身体を得る必要がある。  つまりは、『異世界転生』。  この世界での記憶を持ったまま異世界へ生れ落ちる。  どういった種族、環境で命が宿るのかはまったく想像もできんし選ぶこともできない。  また、今身に着けている魔法や透流の流態(カスタム)が発揮できないこともあろう」
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