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そこまでの話を聞いての透流の「参ったな」発言である。
が、他に手段がないのであれば、残った道を進むしかない。
「で、どうすればいい?
その辺を歩いてたら、召喚陣に巻き込まれるのか?
それともハローワークでトラックに轢かれるべきなのか……。
あっ、そうか、その前にトラックに轢かれかけている幼女を探さなきゃなんないな」
透流の問いに、天野は答える。
もちろん透流の言葉が自嘲混じりの冗談であることは把握している。
「それは簡単じゃ。
逆召喚陣……。
そういったものが伝わっておる。
時と場所を選ぶがの。
大した術式ではない。ただ、利用価値が低く、元の世界に戻って来られる保証もないために半ば忘れ去られようとしているだけじゃ。
同時に二人は無理じゃ。
どちらかを先に送り出して、もう一人は後日……ということになるじゃろう」
「で、その時と場所って?
最短でいつになるんだ?」
と透流が再び尋ねる。
「明後日の満月。
場所は、ここ。
この場所ほど魔力脈の集中している場所はそうはあるまいし、自分の家じゃからの。
好き勝手がきいて楽じゃわい。
屋敷の庭に召喚陣を描く。
その次はまた一ヵ月後の満月じゃな」
そこまで聞いて透流は決意を固めた。
「なら……、まずは俺が行く。鍵の管理はどうせ俺しかできなんだ。
早い方がいいだろう?」
「では、その後にわたしが」
と芙亜も続いた。
「すまんのう。
儂も行きたいところじゃが、こっちに残って逆召喚陣を作動させる役割も必要じゃし……」
「で、魔界……、いや異世界か。
どんなところなのか、そういった情報は……」
「すまんが、詳しいことは何もわからぬ。
この世界とは何もかもが違っているかもしれん。
ただ、わかっているのは異世界は魔力に寛容じゃということ。
こちらにはない七つ目の鍵の手掛かりも……、また、こちらの世界に戻ってくる方法も……、望めば手に入る可能性は低くはない。
あとは、異世界とこの世界では時間の進みが異なるらしいということぐらいじゃのう。
どれほどの差があるのかわからんし、行き来する際にも多少は時間のずれは生じるじゃろう。
お前たちが帰ってくるまで儂が生きながらえておられるか。
それすらもわからん。
まあ、冥界王が復活するのであれば、それは異世界にも兆しが見えるじゃろう。
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