巣立時

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「それでは行ってきます。お父様」  そう言って馬車に向うショートカットの可憐な少女。 「ああ、くれぐれも気を付けてな。結果だけを求めないことだ。  冒険者はお前の夢のひとつかもしれんが、その道だけが人生の全てというわけでもあるまい」  クラサスティス伯の言葉にアリシアは快活に答える。 「はい。わかっております。  今は、この数年間の努力の成果を試す。自分の実力しっかりと発揮してくる。  それだけを胸に刻んで試験に臨む覚悟でおります」  この数年で、アリシアは体だけでなく精神的にも大きく成長した。  もちろん魔術の技術も。魔力量も。  正直、冒険者の養成学園の入学試験に合格できるレベルかどうかは微妙だけど、心構えややる気ならかなりの上位に入ると思う。  その決意の表れの一つが、短くバッサリと切った髪。  元々魔術師を目指しているんだから、髪は長くてもそう邪魔にはならないと誰も彼もから説得されていたが、トレードマークのドリルヘアを自ら望んで切り落とした。 「ルートをよろしく頼みます」  ゴーダがアリシアに言う。もちろん社交辞令というか儀礼的なものが多分に含まれているんだろうけど。  旅の費用からなにから全て面倒を見て貰ってるから、今後はアリシアが俺のパトロン代理という立場でもある。試験に合格して入学が決まった暁には、学費も生活費もすべてクラサスティス家が負担を見てくれるのだ。  これならムルさんとベルさんから頂戴した推薦状を出すまでも無い。一応は持っていくけど。
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