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「…室長…」
私の演技はどうだっただろう。
きっと、すごくわざとらしかったかもしれない。
本当なら…
彼の姿を見つけた瞬間に顔を真っ赤にして喜んだだろう。
自分の顔が上手く表情をつくれないことに気が付いて、慌てて視線をテーブルに向けた。
「あ、お疲れさまです。どうぞ、座ってください。あ、飲み物は…？桐谷さんはどうする？」
視線を泳がせながらメニュー表を広げると、桐谷さんが自分のバッグに携帯を仕舞いながら中腰になる。
「私はここまで。後は二人で…ね。ここまでの分は清算していくね」
「あ、ちょっと、それは…」
「いいの。また今度。今度は祐子ちゃんね」
彼女の笑顔が私を「祐子ちゃん」と呼ぶ。
私は胸の奥でモヤモヤと広がる感情を振り払って彼女に笑顔をつくった。
「うん、今度は私。任せて」
彼女は私に微笑み返し、手を振ってレジに向かった。
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