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桐谷さんが行ってしまうと、室長が私の顔をじっと見る。
お酒を飲んでいるせいか…
いつもは引き締まった顔がわずかに崩れて、切れ長の目がトロリとしている。
「どうした?元気ないな」
「そ、そんなことないです!大丈夫です。何でもないです」
「そんなに必死だと、そうだって言ってるようなもんだぞ」
室長の笑顔に
私はグルグルと私の心をかき乱す感情を、我慢することが出来なくなった。
「…ここに来ること…桐谷さんと…決めたんですか?」
言い終わって私が唇を噛んで俯くと、室長は何でもないようにさらりと言った。
「ああ、俺が桐谷君に頼んだんだ。行ってもいいかって。君をびっくりさせようと思って黙ってて欲しかったんだけど…それは言わなくても桐谷君には伝わってたみたいだな」
室長と桐谷さんの…
言葉にしなくても分かり合える信頼関係。
阿吽(アウン)の呼吸…っていうの?
何だか…
見せつけられた気がした。
「で、元気がないのは?」
室長がさっきよりも顔を近付けて顔を覗き込んだ。
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