疲れる女

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卓哉が玄関のドアを開けると部屋の灯りはついていなかった。麗香は残業か何かで帰宅が遅いのか。既に九時を過ぎていた。 リビングの灯りを点けると麗香がソファーにもたれているのが目に入って卓哉はギョッとした。 「なんだよ、帰ってたのか。灯りも点けないで。びっくりするじゃないか。」 「おかえり。」 麗香は卓哉には目もくれず平板な声で言った。卓哉は警戒のスイッチを入れた。 何があったか知らないがまた例によって麗香の不機嫌の発作に違いない。 「どうしたの?何かあった?」 卓哉は知りたくもないと思っている本心などおくびにも出さずに柔らかい口調で麗香に問いかけた。 聞く気があるかどうかは別として聞こえないはずはないが、麗香は返事をしなかった。 「腹減ったな。飯は?食べた?」 麗香はソファーから立ちあがったが相変わらず卓哉に返事をする気は無いようだ。
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