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「飲む?」
本当は無視したかったが一応麗香にも聞いてみた。麗香はただ首を横に振っただけだった。
「確かに俺は麗香のことわかってないかもしれないけど。」
そこで言葉を切ってビールを一口飲んだ。卓哉は自分に言い聞かせるように続けた。
「でもわかろうともしてないわけじゃない。わかりたいと思ってるよ。一緒に暮らしてるんだから。」
麗香は静かに泣き出した。泣いている麗香を見ても卓哉は哀れだとは思わなかった。むしろその感情は苛々を通り越した嫌悪感に近かった。
「なんで私と結婚なんかしたの?幸せにしてくれるんじゃなかったの?」
「幸せにしたいと思ってるし努力もしてるつもりだよ。」
卓哉は辛抱強く言った。
「幸せじゃないわ。全然。嘘つき。幸せにするって言ったくせに。」
「麗香が幸せになろうとしてないんじゃないか。」
「好きでもないのに何故結婚なんかしたのよ、私と。」
「それはお前だろ?麗香の方こそ俺とは幸せになる気が始めからなかったんじゃないの?俺とは。お前が幸せになりたかったのは俺じゃなくてあの男だろ?今日の原因だってあの男なんだろ?」
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