疲れる女

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言ってしまった。絶対に言うべきではなかった一言がついに卓哉の口から出てしまった。 麗香の顔から表情が消えていった。急速冷凍のように空間自体が固まった。 麗香は否定さえしなかった。そのまま一言も発さなかった。 卓哉は謝るべきかとも思ったが口もききたくなかった。残っていたビールを一気に飲み干して力任せにアルミ缶を潰した。 こういう口論は何度もあった。でもあの男の事を口にしたのは初めてだった。 止めたっていいんだ、こんな生活。こんな疲れる女。 卓哉は今までこんなにはっきりとそう意識したことはなかった。
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