刷りたてのポスターのような夏

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「どれにしようかなぁ?迷う。」 メニューをパラパラとめくりながら永田香織は言った。 どのメニューも童話の比喩にありそうな長いセンテンスになっていて、和志の食欲を刺激するようなものはなかった。 「中村くんは?決まった?」 「うん。」 「どれにした?」 本当のところはどれでもよくなっていたが、和志は瞬間的に目についた比較的シンプルそうな感じのメニューを指差した。 「それも美味しそう。私もそれにしようか迷ってたの。」 「俺は別にこれじゃなくても構わないから変えてもいいよ。」 「いいの、いいの。クリーム系も食べたいし。これもいいな。」 香織はほとんど独り言のようにつぶやきながらメニューを指差して言った。 和志はメルヘンチックなメニューなんかより目の前の奇跡みたいな女の子を見ている方がよっぽどワクワクした。 「ごめんね、お腹すいてるよね。今決めるから。」 一心に下を向いてメニューを見ていた香織が顔をあげたので目があった。 「いいよ。じっくり選んで。」 香織が迷っている間、和志は香織に見惚れていたから待たされている感覚なんかなかった。
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