刷りたてのポスターのような夏

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「そうかもね。ギターは興味ないけど車は好きだな。」 目の前にいる素敵な女の子とコンバーチブルに乗って海岸通りを走ったらどんなに爽快だろう。 和志は顔を上げて窓の外を見た。自宅から通学している学友の中には自分の車を持っている連中も割といた。 入学祝いに親から買ってもらったという奴等。受験勉強が終わるや教習所に通い、入学迄に必死で練習して夏には遊び三昧。 サークルの仲間の中には親のベンツやらBMWを借りてきて尻尾を振る女の子の中から気分次第にチョイスする奴もいる。 その日一番のサイドシートを勝ち取った女の子はパーティーのクイーンになってティアラを着けてお立ち台に上がるかのように優雅な仕草でシートに滑り込む。 残念ながら一番をゲット出来なかった女の子は羨望と妬みの視線を送りながらも、早二番目のシートをキープするためにシフトチェンジに急ぐ。
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