刷りたてのポスターのような夏

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視線を感じて香織の方を見た。まともに視線がぶつかった。 「中村くん、彼女いる?」 唐突にダイレクトに聞かれて和志はとっさに答えられなかった。 「え?」 「彼女。付き合ってる人。」 両手で美しい顎のラインを支えるようにして、その上に小さな顔をちょこんと乗せて心持ち首をかしげて上目遣いに和志を見ている。 ツヤツヤと濡れたように輝くエナメルに彩色された爪がすごく扇情的でイケナイ妄想をかきたてる。 こんなポーズでこんな事を聞いてくるなんて。何を言わせるつもりだろう。 「いるわけないじゃん。」 和志は本当に付き合っている女の子はいなかったけれど、たとえいたとしてもいないと言うに限る。 「ウソ。いるでしょう?」 「いないよ。本当に。」 「本当に?そんなにカッコイイのに?嘘つき。」 まるで和志に気があるかのようにうるうるした目でひたと見つめられて和志は舞い上がった。 「ウソじゃないよ。いないよ。本当に。香織ちゃんは?いるの?彼氏?」 いると言われたら一気に急降下必至なのは覚悟の上であえて聞いてみた。 「いないの。私も。」 今度は噴水のように派手に浮上する番だ。和志は安堵すると同時に気分急浮上でバクバクした。
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