先走る想い

6/9
前へ
/35ページ
次へ
「裕…」 私が寝ているベッドの上に腰をかけた裕は、ペシっとおでこにデコピンをくらわしてきた。 「何が、“まだ帰ってない” だ」 「だって…」 話するの…怖いんだもん。 さっきどうして裕がため息をついたのかも聞きたくないし、 私自身も、気持ちの整理が何もできてない。 「お前さ~なんであんなことすんの?俺だって傷つくんだけど」 「えっ?!」 「婚姻届…」 あっ…。 そうだ。 「ごめんね…裕…」 たとえどんな気持ちでも、婚姻届破くなんて本当にどうかしてた私。 「でも、お前の方が傷ついたよな…」 「………」 「だけど違うよ」 「…な、何が?」 「ため息ついたこと。俺も、もらおうと思ってたから」 「えっ!?」 気まずそうに、チラチラ何度か私の方を見ながら、少しだけ顔を赤く染めてる裕。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1679人が本棚に入れています
本棚に追加