第1章

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来た時と同じ方法で2人は帰って行きました。ちょっとだけ違ったのは、駅からタクシーでデパートに行ってお買物をして帰ったということです。お嬢様はショートケーキを買ってもらいました。黒い革靴は白い革スニーカーになんて話そうかといろいろと考えていました。家に戻るとシズさんが迎えに出てこられました。旦那様は今日もお帰りが遅いようです。お嬢様はサッサッと靴を脱ぐと、自分の部屋で急いでテレビをご覧になられました。何でも大好きな歌手が歌われるそうです。 白い革スニーカーは眠っていました。黒い革靴は脱ぎ散らかされたままで、右足のほうなんて靴の裏が上になっていました。シズさんがきちんと靴を揃えてくれてやっと落ち着きました。白い革スニーカーは薄く目を開けました。 「おかえりなさい、楽しかったかい」 「ええ、とっても面白かったわ」 黒い革靴はもう夜だというのに、それから見てきたことを一生懸命白い革スニーカーに話しました。白い革スニーカーもとても楽しそうにそれを聞いていました。 「なんだか目に見えるようだよ。いつか僕もお嬢様に履いてもらって海に連れて行ってもらおう。ありがとう、黒い革靴さん。今日は疲れているだろうし、ゆっくりお休みください。おやすみなさい」 その週末のことでした。旦那様が久しぶりの休みが取れたということで、ご夫妻はお嬢様を連れて遊園地に行くことになりました。白い革スニーカーが話しています。 「僕は昔、遊園地に行ったことがあるんだ。ジェットコースターの面白さっていったらもう最高だよ」 「わたしはまだ行ったことがないわ」 黒い革靴が言いました。 「なんでも最近、日本で一番大きな観覧車ができたらしいわ。もしかすると海が見えるわね」 「そうだね、きっと海が見えるよ」
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