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その後、大人たちで話し合いがなされ、大事になることなく決着した。
山田の治療費はすべて橘が負担してくれるという。母親はこちらに原因があるのでと断ろうとしたが、橘の方がどうしても引かなかったらしい。ただし、今日の出来事は決して口外しないようにと念を押された。山田を怪我させたことより、山田にキスされたことを知られたくないのだろう。できればなかったことにしたいとでも思ってそうな感じだ。
澪自身は、どう思っているのだろう--。
結局、その後も彼女と二人で話をすることはできなかった。気まずさゆえか、保護者の命令か、澪はずっと山田から距離をおいていたのだ。やがて、保護者に肩を抱かれて病院をあとにする彼女を無言で見送る。山田は言葉にならないもやもやした思いを胸に燻らせたまま、わずかに眉を寄せた。
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