ボーダーライン - 妹のため

4/9

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「じゃあな」  校門を出たところで別れを告げた。これまでに何度も帰るところを見ていたので、遥の家が逆方向であることは知っている。もっとも、山田が見ていたのは遥ではなく澪の方だが。当然ながら兄妹なので同じ家に住んでおり、どちらかに日直などの用事があるとき以外は、たいてい友人たちも含めて一緒に帰っているようだった。  しかし、遥は山田の家の方へ足を進めた。 「おい、たち……遥、おまえの家はあっちじゃないのか?」 「圭吾を家まで送るんだよ」 「いやいやいや、骨折したのは脚じゃなくて腕だからな?」 「送る必要はないだろうけど、僕が送りたいから」  前を歩いていた遥はそう答えて振り返ると、ちょこんと小首を傾げる。 「駄目?」 「あ、いや……」  澪とまったく同じ顔で可愛らしくそう尋ねられては、何も言えなくなる。男であることはわかっているはずなのに。そして、度が過ぎた世話焼きを不気味に感じているのに。何か企んでいるのだろうか--その場に立ちつくしたまま眉を寄せて考え込んでいると、彼に手首を引っぱられた。 「帰るよ」 「……ああ」  結局、問いただすことも断ることもできず、彼と並んで自宅まで帰ることになった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加