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月曜日--。
山田はいつもより幾分か早めに学校へ行き、席についた。その腕にギプスはない。土曜日に病院で無事にギプスが外されたのだ。感覚はまだ完全には戻っていないが、もう字も書けるし、ほとんどのことは自分ひとりでできる。これでもう遥の助けは必要なくなった。
「おはよう、圭吾」
「ああ……おはよう……」
あとから登校してきた遥にいつものように挨拶され、少し緊張しながら挨拶を返す。ギプスが取れたことを報告しなければと思ったが、なぜか口が固まったように動かなかった。しかし、当然ながら遥は言わずとも気付いたようで、席に着くことなく横から山田を覗き込んできた。
「腕、大丈夫?」
「もう何ともない」
「そう、よかった」
遥はそれだけ言うと、鞄を置いて澪たちの集まっているところに向かった。
「あ……」
山田はその後ろ姿を目で追いながら情けない声を漏らしただけで、それ以上は何も言えなかった。自分には引き留める権利などない。久しぶりに昔からの友人たちの輪に入り、話をしている彼は、とても自然に馴染んでいるように見えた。
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