ボーダーライン - 砕けた心(最終話)

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 おまえも、忘れられなくしてやる--。  肩に置いていた両手で、今度は顔を両側から固定するように包み込んだ。頭と顔の小ささと肌のなめらかさをあらためて実感しつつ、少し身を屈めて口づける。単に触れ合わせるだけのものではなく、吐息ごと奪い去るかのような激しいものだ。さすがに驚いたのかビクリと身を引こうとして扉がガシャンと音を立てたが、逃がしはしない。彼の頭を押さえる手に力をこめながら、ますます深く、無理やり舌をねじこみ絡め合わせていく。どうしようもなく甘くてたまらない。舌を絡めるほどに、唾液を味わうほどに、ますます渇望が大きくなっていった。  彼がこういうキスに慣れていないことはすぐにわかった。もしかすると初めてなのかもしれない。そう思うだけで頭がどうにかなりそうなほど高揚してしまう。もっと、もっと、衝撃を受けて一生忘れられなくなればいい。俺のことを意識せざるを得なくなればいい--。  そのうち遥が肩に掛けていた鞄を廊下の床に滑り落とし、苦しげに腕を掴んできたので、山田は我にかえりようやく唇を離した。途端に彼は大きく息を吸い込んだ。その目は心なしか潤み、頬はほんのりと上気し、得も言われぬ色香をまとっているように見える。しかし。
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