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「佐々木先輩が罰を下すからでしょう」
「だらけているお前が悪い。で、そこで何をしていたんだ?」
こちらを指差す滝川先輩と僕を交互に見比べながら、部長は不思議そうな顔をする。
「加藤を待っていたのか。何、お前らそんなに仲良かったか?」
「はい。……な?」
含みのある眼差しを向けられ、しょうがなく僕も小さな声で同意した。
「ふうん。……あまり遅くなるなよ」
しばらく見比べていた部長は、そう言って片手をあげると正門の方へと歩いて行った。
その場に残された僕たちは、相手の出方を探り合うように無言だった。
こういう時は、先輩から話し掛けて欲しい。
「あの……僕に何か用ですか」
言葉を搾り出すと、少しだけ笑ったような気配がした。
「頑張って口説いたつもりなんだけどな。あれでも」
本気だったのか。
「すみません。冗談かと思っていました」
「俺はいつだって本気ですよ」
反応を確かめるように、ゆっくりと近付いて来る。
そのまま自然な動作で鍵を取り上げられた。
「行こうか」
「え?」
「いいだろ?」
その問いは、何に対してだったのか。
「はい」
学校生活において、先輩の言う事は絶対だから。
今思えば、僕の答えはそれしか無かったんだ。
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