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「加藤はさ……、誰かを好きになったこと、ある?」 「…………え?」  潜められた声に思考が途切れた。 「すきなひと」  一言一句、ゆっくりと囁くように動く唇。  不意討ちの言葉に、自分の頬が強張った。 「――――恋愛対象としてなら、……いない」 「今まで? ……一度も?」 「ないよ」 「じゃあ、…………初恋もまだってこと?」 「うん」 「――――そう……」 「ともは、いるの……?」  そう問い返すと、ともはふわりと微笑んだ。 「うん。絶対に手に入らない人」 「……ってことは、告白して振られた、とか」  小さく首を横に振る男を、じっと観察する。  相手はこの高校の生徒だろうか。まったく気付かなかった。  好きな子がいるそぶりなんて微塵も感じさせなかったから、急に言われてもピンと来ない。  かといって、冗談を言っているようには見えない。ということは、今僕はこの友人の相談に乗るべきだ。
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