20

4/5
102人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
「……叶わない恋なら、すぐに諦めてしまえば良い」  結末がわかりきった恋なんて、時間の無駄だし馬鹿げている。とものことだから、きっとすぐに新しい女の子と仲良くなれるんじゃないだろうか。 「そうだね。諦められたら、今よりもずっと……楽になれるのに――――……」  好きでもない相手からの一方的な想いは、迷惑以外の何ものでもない。  お互いが、同じ種類、同じ強さの感情を抱き合ってこそ、境界線を越えられる。 「でも……、どんなに忘れようと努力しても、その人の笑顔を見てしまったら……振り出しに戻されちゃう」 「可能性の無い相手に、どうしてそこまで執着出来るのかわからない」 「いつか、加藤にもわかる日が来るよ。ある瞬間、ふと気付くんだ。心が支配されていることに。世界がその人を中心に回り始めてしまって、自分では、もう、どうしようもなくて……従属するしかなくて…………」 「世界の中心がずれる感覚はわかる。そう思えた相手なら……一人だけいた、から」  どうしても忘れられなかった。  ただ体育館の天井を仰いだ男子生徒に、心を奪われた。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!