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「どうして僕なんですか? 滝川先輩なら、もっと他に選べるじゃないですか」 「目をかけてたの気付かなかった? 卒業した加藤先輩の弟って知った時は正直驚いた」 「お兄ちゃん関係あります?」 「……まあ、そんなには。お世話になったのは確かだけど」 「僕、親友っていわれても、何をすればいいのかわかりません」 「だからこうして手探りデートしてるんでしょ」  その言い回しはどうかと、眼下に広がる座席を見渡す。  背の高い滝川先輩と一緒だから、自然と後方ブロックを選んだ。  親交を深めるため映画を観ることになったのはいいが、先輩の前じゃ落ち着かない。 「まだ、お兄ちゃんて呼んでんの?」 「おかしい……でしょうか」 「あのごつい人をお兄ちゃん呼びねえ。もし俺が加藤先輩の立場だったら、……そうだなあ。――ちょっと可愛く思えるかもしれない」 「?」 「加藤の下の名前、セイゴだっけ? どんな漢字なの」  掌を差し出されたので人差し指で書き始めると、くすぐったそうにしている。 「あ、ごめんなさい」 「気持ち良いからもっとやって」 「…………」
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