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バレーシューズの摩擦音が、体育館を支配している。
部活のレシーブ練習を眺めていると、滝川先輩から声を掛けられた。
「わ、わかりません! すみません!」
どう答えていいかわからず、声を張り上げて謝る事しか出来ない。
得点板に寄りかかり、面白いものでも見つけたような目で見下ろされる。
ふと、先輩の首筋を伝う汗が気になって、その行方を追う。
濡れたTシャツが身体に張り付き、逞しい線が強調されている。
「じゃあ、お前なってみる?」
「……え」
「親友を前提に、俺とつき合ってみない?」
先輩はニヤリと笑い、軽い足取りでコートの中へと戻って行く。
何を言われたのか理解出来ずにいる僕の視界に、先輩のバックアタックが飛び込んできた。
レシーブ練習をしていた一年の悲鳴が響き渡り、我に返る。
滝川先輩の親友……僕が――――
信じられない思いでいると、今度は部長にどつかれている滝川先輩の姿が目に飛び込んできて、体育館は野次と笑い声で溢れた。
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