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 返事をする機会が無いまま、滝川先輩とは会えない日が続いた。  お菓子をつまんでいたのがばれて三年の怒りを買い、休部をくらったようだ。  あまりにも先輩らしくて、呆れつつも笑ってしまう自分がいる。  たまに悪戯をして怒られても、滝川先輩のウイングスパイカーとしての実力は、先輩からも後輩からも認められていた。  でも、それらを抜きに考えたとしても、どこか人を惹きつけるものを持っていると思う。僕がそうだったように。  その場にいるだけで彼を中心に世界は広がり、みんなが目で追ってしまうような……なぜか、放っておけない人だ。  部活の片付け当番の日、佐々木部長と二人一組で体育館の戸締り確認をしていた。  夜の部はママさんバレーで使用する為、支柱は立てたまま、ネットをゆるめるだけで済みホッとした。  すでに正面玄関で僕を待っている佐々木部長に気付き、慌ててダッシュする。 「お疲れ様でした! 鍵は僕が持って行きます!」 「そうか? じゃあ頼む」  お疲れさんと頭をポンポンとされ、身長の違いを思い知らされる。  鍵をかけていると、後ろから佐々木部長の声がした。 「滝川? なんでお前がここにいるんだ」  その名前に自分でも驚くほど反応してしまい、急いで振り返る。  冷水機近くの背の高い人影に、何故かドキリとした。
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