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入院してから一週間が経過した。
俺は毎夜魘されているらしく、目が覚める度に隣に看護婦が居るのに慣れてしまった。
もしこれが相部屋なのであれば苦情が殺到していたことだろうと一人思う。
「………後4週間……」
そう、後四週で俺は卒業となる。
いや、するはずだった。
何故過去形なのか。
俺は高校受験もしていなければ勉強もしていない。
そんな学費の払えない俺に対して学園側は自主退学を言い渡した。
「………散歩でもしようかな……」
俺はゆっくりと起き上がり、
静かに病室を出た。
「ティーンと来たぁ!」
…突然ながら目の前に全身真っ黒なおっさん?が俺にグッドサインをしながら騒いでいる。
ここは病院にある中庭の片隅。
俺は木陰で休憩するべく座り込んでいたのだが同じく中庭で小さな運動をしていた少女がじっと見ていたのが気になった。
「…どうかしたのか?」
「っ!」
ビクッと、やられた方は比較的小さいながらもショックを受ける行動を取った少女は一目散に逃げていった。
「……はぁ…………………ん?」
ふと顔を挙げると日陰を作っている木に隠れて、先程の少女がこちらをみていた。
(何だ?俺に何かあるのか?
そもそも子供ってなに考えてんのかわかんねぇんだよなぁ…
小さい子が興味引く……あっ!
お母さんと一緒か!
いや待て、俺の年でそんな歌を歌ったら回りにドン引きされるに違いない!
そもそも歌を覚えてない!
……くそ、どうする。
このままだと気まずい空気が永久生産されてしまう!
…………こうなったら…………!
「スゥーーーー……………♪~~~~~~」
俺は何となく頭に浮かんだメロディーを
口にすることにした。
女の子は一瞬目を開き、ビックリしたが
やがて近くまで歩いてきて座り込み、俺の歌を聞き始めた。
「♪~~♪~」
次第に俺も乗ってきて目を閉じて歌い続ける。
いつの間にかギャラリーが増え、
歌が終わる頃には拍手喝采を浴びていた。
目を開けた俺はいきなりの出来事にビックリしたが、一例をしてその場を後にした。
後ろからアンコールを受けたのだが
また明日と言うことで手打ちにしてもらった。
そして病室までの道中で……
「ティーンと来たぁ!」
と、言うわけだ。
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