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「た、ただいま戻りましたー………」
銭湯から戻り、事務所の扉を恐る恐る開けると音無さんはもう居なかったがおっさんがまだ残っていた。
「おお、どうだね?さっぱりしたかね……」
急騰室から出てきたおっさんが俺を見るなり固まった。
「えーっと、おっさん?」
「海斗君……だよね?」
「そうですが?」
「いやいや、見違えたよ!
こんなにも変わるとは!」
「はい?」
俺は何を言っているのか分からず
鏡を見てみた。
「あー、成る程」
そう、退院から今日までの4週間、川水で適当に洗っていたためか、
before
髪質パサパサ、長すぎて鼻辺りまで隠れる、所々に汚れがつき、パッと見根倉のオタクじゃね?って感じ。
after
真っ直ぐ艶のある髪質にしっかり整えられた顔立ちが分かり、俗に言うイケメンとして急変身を遂げていた。
「と、取り敢えず今日はもう寝るといい。
毛布はソファーに置いておいたからね」
「ありがとうございます」
「それでは私は失礼するよ。
また明日、改めて話し合おう」
「あ、はい。
お疲れさまでした」
おっさん………いや、社長は鞄を持つといそいそと帰っていった。
そしてふと机においてある資料が目に入った。
「…アイドルについて……か。
結構あるな。………時間…」
時計を見ると午後11時を指していた。
「12時には寝よう。
それまでは…………」
俺は大量にある資料を丁寧に読み始め…………
「おはようございまーす」
「うおぁ?!」
ガタガタ!
急に入ってきた音無さんにビックリして
椅子から転げ落ちてしまった。
「だ、大丈夫ですか?!………って…
どちら様ですか?」
あわてて駆け寄ってきた音無さんだが、先程の社長の反応と全く同じで俺が誰だか分からないようだった。
説明中…………
「ところで、音無さんは忘れ物ですか?」
「はい?」
「……え?あの、戻ってきたんですよね?忘れ物とか取りに」
「??、私は出勤してきただけですよ?」
「出勤…?」
は?まさかこの会社は早朝から出勤させるシステムでもあるのか?
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