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…………どうやら俺が資料を読み始めてから普通に日を跨いでいたらしい。
詰まり、さっきのではなく昨日の。
忘れ物ではなく出勤だと言うことである。
因みに今は朝の7時34分である。
「あはは……つまり寝てないんですね?
資料に夢中になって」
「…はい」
苦笑いで俺を見る音無さん。
そんな俺は既に資料を読み終わり、
アイドルとしての基本知識を身につけた。
「それで……何かする事ありますかね?」
「えっと……そうですねぇ……」
顎にてを当てて考える音無さんが
不意に俺を見ると
「散髪にいきませんか?
ついでに服装を整えに」
「えぁ、お金無いですし……
散髪に至っては今まで行ったことも無いですから」
「えぇ?!じゃあ今までどうしてたんですか?」
「それは、自分で鏡を見て切り揃えてました」
「そ、そうですか………じゃあハサミがあるのでやって来ますか?」
「あ、分かりました」
そうして俺は鏡の前に行き、首にタオルを巻いてカットをし始めた。
10分後……
「よし……」
「ピヨッ?!早すぎませんか!?」
そうかな?
取り敢えず違和感とか無いから大丈夫だと思うんだけど…
「凄い……完璧に整ってる…」
音無さんが俺を見るなり驚きの表情で固まる。
取り敢えず落ちた髪の毛の掃除もやっちゃおうかな………
おうかな……
かな……
「ピヨーーッ?!
いつの間にか事務所が綺麗にぃ!!?」
ようやく意識を取り戻した音無さんが今度は発狂し始めた。
忙しい人なんだな、と記憶して掃除器具をロッカーにしまう。
「す、凄いんですねぇ…」
「いや、そんな…」
「流石にもうやること無くなっちゃいましたし…社長が来るまで休んでて下さいね?」
「いや、でも…」
「下さいね?」
「…はい」
何故そんな怖い顔で迫り来るのだ?
俺何かした?
「(こ、これ以上ハイスペックな所が発覚したら私の立場が霞んでしまいます……
それだけは阻止しなくては!」
「(何か音無さんからなんとも言えないオーラが出てるけど……触れたら敗けだよな?」
このなんとも言えない空間は社長が来るまでの20分間続いたと言うことを記しておく。
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