どうやら学校へ行けるそうです

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「片桐 海斗です。 こんな時期に転入は変だと思う方も居るでしょうが、どうぞ宜しくしてください」 俺は教卓の横に立ち、黒板に名前を書いて自己紹介をする。 状況説明なんて言わすもがな、俺は学校へ来ていた。 こんなことになったのは勿論理由がある。 それは昨日の朝の、社長の一言から始まった。 『せっかくだから高校へ通ってみないかね?』 いきなりの事で反応に遅れたが、元々学校へ行きたいと心の奥で思っていた俺は二つ返事で承諾を取った。 ただ、もう少し考えるべきだった。 俺は今ではそれなりに有名なアイドルであり、普通に通えるような人間ではないと言うことだ。 詰まりは変装をしなくてはいけない。 それも、学校に合った容姿にならなければならない。 普段の格好から酷くかけ離れた姿。 「何だよ、オタクじゃねぇか」 「期待して損した」 「話しかけられたらどうしよ」 ……まぁ、分かっていたことだ。 俺の今の格好、もっと言えば顔はなるべく不自然さを感じさせないように髪をボサボサにし、伊達眼鏡をかけ、メイクでそばかすをうっすらと表現させている。 地味で汚ならしく、こんなことなら別に学校へ来なくても良かったと、今では思ったりしている。 しかし、折角の社長の好意に断ることは出来ず、日頃からお世話になっているのだから、これくらいは我慢しようと思い、今に至る訳だ。 「では片桐の席は…最上の隣だな」 「うっわ……(ボソ」 (聞こえてるよ…はぁ…) 俺は迷いなく指定された席に向かい、 その向かう途中で……粗か様に足を掛けようとしている生徒に気づいた。 「……(ニヤニヤ」 さて、どうしたものか。 これに掛かるか掛からないかで今後が左右されるといっても過言ではない。 「………」スタスタスタベシィッ! 「痛っ!」 俺は迷いなく、歩きながらその生徒が足を出した瞬間に向こう脛を蹴ってやった。 まさか蹴られるとは思っていなかったその生徒は勢いよく立ち上がり、声をあげてしまう。 「どうかしたのか?葛西」 「あ、いや、なんでも……」 静かに座り直し、指定された席に座った俺を睨み付ける葛西(笑) ガタガタ 俺が席に座ったと同時に隣の…最上さん?が自分の席を遠ざける行動を取ったのはちょっと…いや、かなりカチンと来た。
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