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ふわり……と。
長い巻き毛の黒髪を鳥の羽根のように散らして、アンジュは崩れるように、倒れた。
少女らしいあどけなさが残るその顔に、苦痛の色はない。
しかし、彼女は長い廊下の途中で力尽き、大きな蒼い目を見開いて、まばたき一つ、しなかった。
繊細なステンドグラスで飾られた窓の隙間から、断絶魔の余韻のような今日最後の陽光が完全に消え失せるまで、誰も、アンジュを介抱する者はない。
彼女は、ただ、糸の切れた人形のように、ずっと横たわっていた。
やがて、ふんわりとした黒いレースのスカートに身を包んだ、アンジュの細いカラダが完全に冷え切り。
倒れた彼女の上を飾る、豪華なシャンデリアに、ろうそくの灯りが点ってようやく。
闇より暗い瞳と髪とを持った長身の男が、アンジュを、自身の白い両手で抱きあげた。
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