第1章

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 お父さまの部屋に行くと何やら電話で話している様子だった。扉越しから耳を近づけて聞いていると、どうやら私の見合いの件を誰かに相談しているようだった。  電話の内容は、途切れ途切れに聞こえてくるだけで内容の全てを聞き取ることは、出来なかった。  いつもの様に黒電話を腕に抱えながら電話しているんだろう。その姿を想像するだけで腹が立った。  仕方がないから扉の近くの壁に背もたれて、電話が終わる頃合いを見計らっていた。部屋から声がしなくなったので扉を叩いてから部屋に入った。  私は、不機嫌な態度をとってお父さまに用件を聞いた。お父さまは、机に頬杖を付いて言った。 『外に出てみないか?』  唐突過ぎるお父さまの言葉になにか裏があるように思えた。 『急にどうしたんですか?もしかして、お見合いがあるから外に出て精神の状態を正せと言いたいのですか?お父さまは、身勝手ですね』  聞いていたのかとお父さまは、呟いた。お父さまは、険しい表情をした後、お前のためだ。そう言ったきりでそれ以上は、何も言わなかった。  お父さまは、私の喉にできたポリープの辺りを見て視線をそらした。 『醜いですか?そうですよね。あなたに私の苦しみなんてわかるはずがない!』  私は、自分で言ってしまった事を悔いた。嫌いな人でも言って良いことと悪いことがある。ましてや、私の父であり、私の生活を支えている。その人に私は、怒声を浴びせてしまった。  私は、片手で顔を覆いながら、足早にその場から立ち去った。
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