第1章

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 もう、壊れそうだった。いや、もう壊れているのかもしれない。お父さまの部屋を出てから、廊下を歩いている途中に掃除をしていたメイドがいた。  私は、そのメイドが持っていたモップを掴み地面に叩きつけて言った。 『あなたも大変ね。こんな、どうしようもない娘がいるお屋敷で働かされているんだもの』  メイドは、困った顔をしてモップを拾った。その姿を見ていたらなんだか、悲しくなって私は、ドレスの裾を持ちながら廊下を走った。  自分の部屋に戻ろうかとも思ったが、外に出ることを許されているのだから、お屋敷から出て花をめでよう。そしたら、気分が落ち着くかもしれない。そう思って玄関の前まできてみたものの外へ出ることをためらっていた。  怖かった。お屋敷の外に出て何かが変わってしまう。変わりたいと思っていた。けれど、思っていただけで、いざその時になると迷ってしまう。なんて、ダメな人間なんだろう。そう思うと目が熱くなって、頬に冷たいものが流れていくのを感じた。
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